Page3.音楽家紹介

世界会議の魅力のひとつに音楽家の皆さんの生演奏があります。
Page3では三者三様、全くジャンルの違う音楽を扱う3人の音楽家を紹介をいたします。
 









 

 (左から、下町兄弟さん、徳久ウィリアムさん、太田豊さん)
 


 
 
ーー音楽家の皆さんから見て世界会議はどうでしょうか? 
 
 
 
太田さん
  小池さんと初めてご一緒したのは2012年の終わり、「マイサンシャイン」という舞台です。それ以来、『 注文の多い料理店 』『銀河鉄道『風の又三郎-Odyssey of Wind-』、マハーバーラタ第3章『幻祭前夜-マハーバーラタより』を客席で観てきました。いつも小池さんのやっていることが気になるんです。とくに生演奏を舞台上でどう使うか?というところや、伝統芸能をバックボーンに持つ演者の方がどんなことをして、作品の中でどういう役割があるのか?という点にずっと注目していました 。
  この度、演奏と作曲で参加させていただき本当に楽しくやらせてもらっています。最初はこの楽器編成でどんな曲を作ったらいいかという不安もありましたが、3人で音を出してみたら「こんなに笛と口琴が合うのか!」とか、サックスと声とジェンベで「どこだかわからないけど懐かしい民族音楽みたい!」とか、すごく刺激的です。
  世界会議の音楽は、世界でここにしかない不思議で笑えてちょっと切ない素敵な音楽です。キャスト、美術、映像、照明、みなさんと渾然一体となって奇跡を起こしたい!
 
 
 
下町さん
小池博史さんの作品にはパパタラフマラ時代『Heart Of Gold〜百年の孤独』からお付き合いさせてもらっています。
以後、生演奏では『注文の多い料理店』『風の又三郎』『幻祭前夜〜マハーバーラタより』と、特にここ数年は連続で参加させてもらっています。
以前もどこかで述べたかもしれませんが、一音楽家からの勝手な視点で、小池さんの作品自体が1つの音楽であるかの如く感じています。それは組曲なのか、ラプソディなのか。いや、そんなカテゴライズされるものでは勿論ありません。但、ぼくがいつも感じている部分でもあり、気を遣う最大の部分でもあるのです。
時には舞台上の動きに合わせ、時には舞台上の動きを引っ張る役割も与えられています。それは1つの同じ呼吸の中に存在できなければ、うねり(Groove)もリズムも気持ち良いものにはなりません。役者の人たち全員が音楽家でもありリズムや音を放っていて、それをお互いに感じながら自分の出す音量や速度も変化しているように思うのです。
本作は音楽的にもかなり細部に渡って、密度の濃い内容になっていると思います。飛び交う音の演出の部分でも充分楽しんでもらえるのではないでしょうか。
いつかチャンスがあればサウンド・トラックのアルバムなども録音してみたいですね!
 
 
 
徳久さん
私自身は、普段「ボイスパフォーマー」としての活動がメインです。
「声と、声の表現の可能性の追求」が私のテーマです。
世界には、実に沢山の「声の表現」があります。
私は約20年近く、「際立った声」をリサーチしてきました。大抵の声には驚かなくなりましたが、今でも「こんな声があったのか!」と驚く発見がたまにあります。
それほど、人の声は多様なのです。
そして、その多様性を生み出すのは、人間の喉の柔軟性です。
この楽器は本当に面白い。
今回の世界会議では、稽古中に小池さんが私のボイスパフォーマンスを聞いて、「うーん、声は面白い!」と言ってくれました。
そして、様々な場面で声を使ってくれています。
この声の多様性と面白さを理解し、ちゃんと演出してくれる人はあまりいません。
なので、今回、世界会議で、ちゃんと声の面白さを表現できるのはとても嬉しいです。
お客さんにも、「人間の声ってすげー!」と思ってもらえると嬉しいです。




さらに今回は、せっかくジャンルの違う音楽家が集まっているからと、
世界会議で使う楽器の紹介をしていただきました!

たくさんの種類の楽器達が集まってどんな音楽が生まれるのか・・・。
想像するだけでも、ワクワクしてきます!




太田さんの楽器 

 
 
ーーすごい多様ですね。一番使われるのはどの楽器なのでしょう。
笛です。これは雅楽で使う横笛で、手前の若干太いのが「龍笛」、細い方が「高麗笛」です。
SAXも結構使いますね。これはアルトサックスです。他、奥の機材はギターのエフェクターとループサンプラーです。なんでこんなにたくさん使うのか?・・・この世界会議の音楽はできるだけ生演奏にしたいと思ったらこんなに増えてしまいました。

雅楽の演奏家は管楽器、絃楽器、打楽器、歌、舞が全部できて一人前なんです。なのでいろいろ楽器を持ち替えることに抵抗がないんです。
まぁSAXを吹いたり、ギターを弾く人は珍しい、というか 私だけかもしれません(笑)
 

 
ーー太田さんは世界会議の作曲もメインでされていますがどうですか??
テーマ曲は自分でもすごく気に入っています。とくに徳久さんの声と下町兄弟さんのパーカッションが加わると、一気にどこにもない「世界会議」の雰囲気が出来上がることがとても楽しいです。毎回少しずつ変わっていく我々の音とともに「世界会議」を楽しいんでいただきたいです!

下町さんの楽器 

 
 
ーー下町さんはまた、楽器の量が多いですね!

打楽器に関して、djembe(ジェンべ=ジャンべ)という西アフリカで生まれた太鼓を主力に鳴りものを並べています。
天然の堅い木を刳り貫き山羊の皮を張ったハンドメイドで小さいものから大きなものまで今回は全部で4種類口径の違うものを揃え、その他はシンバル類、アフリカ産のKalimba(カリンバ)、ホームセンターで売ってるペンキの缶を大小並べ手作りのジャンク・ドラム、Flex-a-tone、メロディ・ホース、スレイ・ベル、エレファント・ベル色々登場しますが、1音の為だけに用意している楽器も多々あります。
運ぶことを考えると、まあ〜録音で出せば済むじゃないの〜っと思う楽器もありますが、そこはやってみないとわからない生の良さがあるわけですね。
同じ音を出す演奏よりも色んな音を出せる効果が期待されるシーンも増えたかもしれません。
基本的に打楽器なので長いトーンの出る楽器は少ないのですが、打点の種類で様々な音を効果的に出す為のバリエーションが要求されるのでセンスが問われる部分でもあります。
また動きに加え、秒刻みで正確に音を入れないといけないシーンもあり、時にはタイムキーパーになることもあります。
言える事は、小池さんの作品で、反射神経と集中力が、この歳にして鍛えられました。

 
ーー 他の音楽家さんとのセッションはどうですか??

本作で初経験だったことは、稽古が始まる前の段階で、譜面もサイズも作曲されたデモも聞かず、いきなり音楽家3人の録音から始まったことです。
小池さんからシーン毎にイメージと尺をもらい、それを即興で演奏したものを録音し、予定調和ではない面白さがベースになっていたりする曲も使われています。
場面によっては気分で演奏したり、間違って演奏した録音が逆に良かったりして、それを後に再現するのに苦労した曲もあります。

 

徳久ウィリアムさんの楽器 

 
 
 
ーー徳久さんの楽器はまた、独特ですね・・・!
 これは口琴(こうきん)という楽器です。
口琴は、実は世界中に分布している、知る人ぞ知る楽器です。
そして、実はほとんどの日本人が知っている音色です。
「ド根性ガエル」というアニメの冒頭で使われている「びよよ~ん」という音。アレが口琴です。
写真を見て頂くとお分かりになると思いますが、非常に単純な構造をしています
また、その「びよよ~ん」としたファニーな音から、楽器ではなく、オモチャ的に捉えられがちです。
ですが、よく見ると、とても細かい仕事がしてあり、その細かな仕事が無いと、口琴はまともに鳴りません。

また、ちゃんと演奏すると、「びよよ~ん」だけなく、
つまり「効果音」的にではなく、『音楽』として非常に色々な演奏が出来ます。
その証拠に、世界には、実に様々な口琴音楽が存在します。そのバリエーションたりや、驚くべき程です。
例えば、インドでは、伝統音楽の中で、リズム楽器として、
ヨーロッパでは、メロディー楽器として、
東南アジアの雲南少数民族は、恋人へのメッセージを届ける手段として、
シベリアのサハ共和国は、シャーマンの道具として儀式に使われたりするのです。

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音楽には
・メロディー
・リズム
・和音
の3要素があると我々は習いました。
そして、口琴はこの3つのどれも演奏できます。が、ここに無い、でもとても大事な要素があります。
 
そして、それこそが口琴が一番得意な要素です。それは何か分かりますか?
それは「音色」です。
音色の多様性。
色んな音を表現すること。それが口琴の最も得意とするコトです。

そして面白いのは、口琴は「人間の口」が無いとまともな音が鳴りません。
口琴の音の多様性は、実は「人間の声」の多様性の現れでもあるのです。
我々は、当たり前のこととして、あまり認識していませんが、実は人間の声というのは、
非常に沢山の音が出るのです。
言い換えれば、声の多様性こそが、人間の特徴、というコトもできます。

この「世界会議」では、リズム、メロディー楽器としての側面と、
「音色」楽器としての口琴の魅力をお届けしたいと思ってます。


■太田豊
音楽家・雅楽演奏家
雅楽演奏家として笛・琵琶・左舞を専門とし、国内外での雅楽公演に出演。笛・左舞を元宮内庁式部職楽部首席楽長安齋省吾氏に師事。また音楽家として笛、サックス、ギター、サンプラーなど様々な楽器を用いて舞台芸術のための音楽を制作し、多種多様なアーティストと共演。その他、北陸新幹線新高岡駅発車メロディーをおりん(仏具)を用いて制作するなど、和洋のハザマで多岐に渡って活動中。東京藝術大学邦楽科卒業。
 
下町兄弟
サウンド・プロデューサー/ソングライターとして多数アーティストへのトラック・メイキングや楽曲提供を行う(BANANA ICE)。ラップ・パフォーマー/djembeプレイヤーとして下町兄弟を名義に活動。SHIBAURARECORDS(since 1992)を主催しオリジナル作品を発表。パパタラフマラ舞台『百年の孤独~Heart Of Gold』の出演をきっかけに、小池博史作品には『シンデレラ』『注文の多い料理店』『風の又三郎』『マハーバーラタ』に参加している。

 
徳久ウィリアム
声を使った音楽的表現で、ヒトのココロと身体と、自然の原理・原則の体現を志向するボイスパフォーマー。ホーメイ、デスボイス、独自のノイズボイスまで、特殊発声を得意とする。『声の大学』を主宰し、声のレクチャーにも力を入れている。