小池博史ブリッジプロジェクト「風の又三郎2016」とは

「小池博史ブリッジプロジェクト」が進める宮沢賢治シリーズの第3弾であり、最後の宮沢賢治童話をモチーフにした作品。「動物と人間」の関係に焦点をあてた『注文の多い料理店』、「死者と生者」という視点から創り上げた『銀河鉄道』に続き、創作された。
 「かぜのまたさぶろう」にはふたつのバージョンがある。又三郎という名の転校生の、一般によく知られた物語が「風の又三郎」。もうひとつは風の精としての又三郎をモチーフとした「風野又三郎」だ。文字通り風と野の又三郎が描かれている。 「小池博史ブリッジプロジェクト」版「風の又三郎」では、小学校を舞台に繰り広げられるユーモア溢れた「風の又三郎」と、野原、野生、野獣…と言った原初的なエネルギー体に繋がる「風野又三郎」の、双方の世界観を描きつつ、人間とはなにか? ヒトはどこから来てどこへ行くのか?という根源性を強く訴える作品である。つまり大地と風の力をきちんと受け止めて生きる人こそ、野のなかではじめて未来を見ることができるのだ、という宮沢賢治と小池博史の発する強いメッセージが見る者の心を射抜く。
 

2014年吉祥寺シアターにて


 
 

原作・宮沢賢治著「風の又三郎」あらすじ

ある風の強い日にやってきた転校生の三郎は、風のようないたずらをする不思議な子であった。ある日、地元の子どもたちと三郎が馬で高原へ遊びにいった際、馬が逃げ出しそれを追った嘉助は、深い霧の中で昏倒しながらガラスのマントを着て空を飛ぶ三郎を見る。その後、すぐに転校した三郎を、子供たちはその地で伝承される風の神の子“風の又三郎”であったというのだった。 村の子供たちの心象風景を現実と幻想の交錯として描いた物語。
 
 

参照「風野又三郎」

主人公である風の精、又三郎が様々な大地や海を駆け抜ける物語を村の子供たちに語りかける。そこには自然と人間の密接な関係が描かれている。風の精の長であるヘルマン大佐や、又三郎の兄弟が登場し、低気圧(サイクルホール)、海風、陸風、暴風など様々な風が、地球全体を循環する物語が語られる。 本作と大正年中に書かれていたいくつかの村童スケッチ「種山ヶ原」、「さいかち淵」などが挿話として取り入れられ、より現実的な物語へと改編されたものが「風の又三郎」として賢治が没翌年(1934年)に発表された。 
 
 

小池博史ブリッジプロジェクト「風の又三郎-Odyssey of Wind-」について

本作は、「風の又三郎」「風野又三郎」を原作としつつ、小池博史が、又三郎や風の精たちを通して自然と人との関係を描き、東日本大震災と福島第一原発事故のあった「3・11」後の世界を見つめ直す作品として再構築した。 小池は「これまでの社会は見えないものを切り捨ててきた。見えない風を舞台で可視化することで、何が見えてくるのか、頭で考えるのではなく“感じて”ほしい」と話す。
 

2014年吉祥寺シアターにて


 

平成28年度 宮沢賢治生誕120年記念 4館共同制作 とは>

東北を代表する作家・宮沢賢治の生誕120年を迎える今年、地域が“風”で繋がり、文化をつくる

2016年の4月から11月にかけて、4都市(宮城県仙台市、長野県長野市、茅野市、東京都多摩市)の文化施設4館が“宮沢賢治”をテーマとした市民創作プログラム、および「風の又三郎」の舞台作品の創作・上演に、世界で活躍する舞台演出家・小池博史らとともに臨みます。 この取り組みは、宮沢賢治の遺した芸術・思想を基軸に、鑑賞だけでなく創造体験を通し、舞台芸術およびそれぞれの地域のもつ文化のありように対する市民理解の深まりとともに、私たちの現在と未来を捉え直そうと企図しました。
 

【出演】
清水寛二(能楽師・銕仙会)、松島誠、小谷野哲郎、谷口界、立本夏山、松縄春香
 
【演奏】
中村明一(尺八)、下町兄弟(ジャンベ・パーカッション)
 
【スタッフ】
作・演出・振付 :小池博史
音楽:菅谷昌弘、中村明一
美術:鈴木康広
小道具:五十嵐彩乃
衣装:浜井弘治
照明:上川真由美
音響:印南昭太朗
舞台監督:中原和樹、吉田誠