演出

小池博史(Hiroshi Koike)

小池博史

演出家・作家・振付家、「舞台芸術の学校」代表
茨城県日立市生まれ。一橋大学卒業。TVディレクターを経て1982年パフォーミングアーツグループ『パパ・タラフマラ』設立。以降、演劇・舞踊・美術・音楽等のジャンルを超えた全55作品の作・演出・振付を手掛ける。3.11を機に翌2012年に解散、『小池博史ブリッジプロジェクト』発足。創造性を核に教育・発信・創作を三本柱とした連携プロジェクトを発信中。現在まで9作品を制作。特に2013年から2020年まで継続する「マハーバーラタ」プロジェクトはアジア中の数多くのアーティストを巻き込みつつ展開している。
現在までに約40カ国で上演。海外のアーティストとの創作作品は多く、国内外でのワークショップ等も数多い。97~04年つくば舞台芸術監督、アジア舞台芸術家フォーラム委員長、国際交流基金特定寄附金審議委員(05年~11年)等の審議員、審査員を歴任。著書として「ロンググッドバイ」(青幻舎)「からだのこえをきく」(新潮社)がある。新著「新・舞台芸術論」(水声社)を2018年1月刊行予定。月一回のメールマガジンを発行中。

あらすじ

舞台は2030年。
もともと住んでいた地域を追われた人々が流れ着き、澱んでいる場所。
一見明るく見えるその場所で誰もが腹に一物抱えながら、ときどき噴出するさまざまな疑惑。
何が起き、誰が居場所を奪い去り、逃れて来たのか……。
あきらめ、怒り、追求と逃亡。
漂流する世界の民が描き出す未来とは……。

ディレクターズノート

 僕たちは瀬戸際に立った。
 まさかこんな時代が来るとは思わなかった。また日本がここまで劣化するとも考えていなかった。未だ何パーセントの日本人がこの国は豊かだと思い、将来を夢見ていられるのか。
 僕たちはこれから居場所を探し続けなければならなくなるだろう。今のまま、安定した「日本」にいられるとは考えないことだ。自然現象、政治、経済面ばかりか、AI化によって多くの仕事は消え去り、さまざまな自ら生み出した矛盾と脅威に立ち向かわなければならなくなる。
 これは日本だけではなく世界全体が直面する問題で、居場所を失った人々は問題を抱え込みつつ流動化する。今の世界は単純ではなく複雑、自己矛盾だらけの狭い世界に埋没したままだからきわめて厄介、簡単に解決できる問題などどこにもないが、一部の人間は蒙昧にも関わらず野望だけはあって困難に輪を掛けている。
 しかし僕たちは、いったい何が問題を解決に導くのか、方法を探らねばならぬ。それが今後の生き方に繋がる。
 2030年、僕たちはどこに立っているだろうか。