2030世界漂流・稽古場レポート、出演者紹介&インタビュー!
続いては、谷口界さん&青木賢治さんです!
谷口 きっかけは本当にシンプルで、好きなことでご飯が食べたかったからです。僕は高校生の時まで器械体操をやっていました。それが好きだった。だから、それを活かしてご飯が食べられないかなと思い路上に出て、大道芸を始めました。
谷口 大道芸の最大の特徴は、やる場所、空間だと思います。舞台で大道芸の空間は再現出来ません。音はうるさいし、人は行き交っているし、興味ない人は見ないし。その中で自分に興味を持ってもらい最後まで見て貰うためには色々な工夫が必要です。でも、それが面白い。急に酔っ払いに絡まれたり、警察が来たり、そんな舞台ないでしょ。でも大道芸人はそんな中で、時にはそれを利用し、見事にドラマを展開していく。そのプロフェッショナルです。舞台にはないライブ感と空間が、なによりの魅力だと思います。
谷口 大道芸とは逆にゼロから創ることが出来るのが舞台だと思います。先ほどの大道芸の事を例に出すと、大道芸はすでに場所や音、光まであらゆるものがが存在しています、ゼロから創ることは不可能です。だから、それを活かすこと、利用する事を考えます。でも舞台は、ほぼゼロから創っていく作業です。どのマテリアルをどのくらい使い、どの位置に配置し、どう動かしていくのか、細かく細かく創り上げていくことができます。でも、それだけに計算が狂えば一気に崩壊するし、あらゆる視点でものを見る力がないと面白いものは創れないと思います。小池さん程細かく計算している人もなかなかいないと思います。
谷口 小池さんはあらゆる角度から舞台を見ているし創っている人だと思います。ですから、やる方もテクニックだけではなく、あらゆる面で作品を深める努力が必要です。でも、そこが面白いと感じるところです。テクニックだけ見られても僕はあんまり面白いと感じない、けど、小池さんの作品では色んな工夫を評価してもらえる。
谷口 今回だけではないのですが、小池さんの作品に出演する方は、各々持っている魅力的な部分が違うので、それを観察しているのがとても楽しいです。声が凄く魅力的だったり、身体の使い方が不思議だったり、顔が面白かったり。なにより今回は、僕が心からリスペクトするフィリップ・エマールという素晴らしい人がいます。フィリップを初めて見たのはもう8年ほど前、シルクドゥソレイユのZEDという作品でした。こんなに面白いクラウンがいるのかと、物凄い衝撃でした。そのフィリップと共演できる日がやってくるなんて、人生なにが起こるか分からないものです。もう一挙手一投足見逃さないように稽古に臨んでいます。
青木
私はずっと長野を拠点に活動していて、今後も長野を中心に活動していくつもりでいるのですが、やっぱりその範囲内で経験できることってすごく限られているんですよね。 だからできるだけ色んな所に出ていかないとダメだなっていう気持ちはすごく強かったんです。そんな時にずっと出たいと思っていた小池さんの作品のオーディション情報を見て、これは挑戦するしかないなと。
元々小池さんとの出会いは6年前(2012年) に長野県茅野市で開催されたワークショップだったのですが、その時の衝撃は今でも忘れられないです。 一般向けのワークショップだったのですが、小池さんが参加者に対して全く妥協しないですよね。容赦ないというか。例えば、みんなで舞台上を走り回るシーンが幾つかあったのですが、何度も繰り返して稽古をするもんだから、僕も含めて参加者の半分くらいはずっと足をつってました(笑)ただ面白かったのは、みんなキツイキツイと言いながらも、どこか楽しそうで、充実感に満ちあふれた空間になっていたことですね。やっぱり小池さんのエネルギーが凄かったからだと思いますが。 最終的に1時間位の作品が完成したのですが、あれはあのときに集まったメンバーでなければ絶対できないだろうなって思える舞台作品になっていました。
それから、何本か小池さんの作品を観る機会があったのですが、どの作品も深く、多層的で、 根源的な記憶を揺さぶられるものばかりでした。一番印象的なのは、虚構であるはずの舞台から時としてものすごくリアルな現実を感じられる所ですね。本当に観ていてドキッとさせられるんです。
あれだけの空間を創り出すのは並大抵のことではないですし、間違いなく妥協のない作品創りが行われているように思えたので、そのことも含めて魅力を感じずにはいられなかったです。
だからこそ私にとって小池さんの作品は観るだけではなく、是非とも立ちたい舞台だと思っていました。なので今回このような機会を頂けて本当に有難いです。
青木
もう皆さん凄いんですよ。個性にあふれているし、身体は強いし、本当に魅力的です。私自身は日々頭も身体もフル回転でなんとか皆さんに付いていっている感じですね。
その中でも特にフィリップさんとムーンムーンさんの存在は圧倒的で、二人の表現力や身体性はいとも簡単に言語の壁を超えてしまうんですよね。しかもめちゃめちゃ面白いですし。
毎回の稽古はもちろん大変な部分もあって、ダメ出しをもらって自分の力不足を痛感することも多々あるのですが、そんな時に見本になるような素晴らしい出演者の皆さんがいるというのはとても心強いです。
長野にいたままでは決して出会うことのできなかった皆さんと共に、こうして稽古をしながら、その演技を間近で見れるのは本当に勉強になりますね。
残りの稽古期間も皆さんの持ち味を余すことなく吸収させて頂きながら、本番に向けてしっかりと準備していきたいと思います。