第4回アーティストインタビュー

2030世界漂流・稽古場レポート、アーティスト紹介&インタビュー!
第4回はジャンベ・打楽器の下町兄弟さん&映像の飯名尚人さんです!

下町兄弟さんインタビュー

1.パパ・タラフマラ「百年の孤独~Heart of Gold」(2005)の出演をきっかけに、「パパ・タラフマラの新・シンデレラ」「注文の多い料理店」「風の又三郎」「マハーバーラタ」「世界会議」と多数ご出演いただいている下町兄弟さん。小池博史からは「そりゃもうラッパーでヒットメーカーで、なおかつ、ジャンベ奏者、パーカッショニストであり、変なコマ―シャリズムにはまらない、非常に面白い存在」と評されています。小池作品の魅力や遣り甲斐はどんなところですか?

下町兄弟 最初に小池さんの作品と出会ってから今も変わらないことの1つは、常に新鮮で自分自身が純粋な気持ちで向き合え、未知の感性を引き出してくれるところです。
関わらせて頂いたどの作品もぼくの中では、とても音楽的で大きな流れの中で、1つ1つの呼吸を感じています。細かい呼吸が最終的に大きな息吹に変化する様を実感できることは本当に貴重な瞬間です。緻密に秒単位で刻む音がある一方で、無限に自由な発想が生かされる機会を与えてもらっています。当り前の様に進行していることも後で振り返ると奇蹟の連続だったりと感じることがあります。一言ではなかなか表現しにくいですが、作品に加われることは勿論、可能性をどこまで音で広げられるか、模索する時間にもまた遣り甲斐を感じています。


2.これまでの小池作品の中で、もっとも苦労されたエピソードがあれば教えてください。

下町兄弟 「百年の孤独~Heart Of Gold」は小池さんの作品に初めて参加させてもらった大きな体験です。演奏ではなくRapをするパートを主に出演者の1員でした。舞台に出演することも稽古に参加することも初めてでしたので、それはそれは全てが身体に力が入り過ぎた状態だったかもしれません。
山口県の初演の1ヶ月前に山口の合宿稽古に合流し、"ダメ出し"と言われる通し稽古の後のチェック・ポイントを毎日受けます。これは普段の音楽の仕事場ではないものだったので、戸惑いましたね。
音楽の現場だと常に褒められてモチベーションを上げて行くことしか無いので、ダメな部分を毎日言われ続け(実際には良くなるための改善)、テンションがどんどんと落ちて「良いところ全然ないのかな~」って1週間もすると1人で考え込んじゃったんですよね。同じことを何度も何度も稽古するという経験もなかったですしね。
小池さんがその時も教えてくれたのは、タイプが2つあって、徐々にギアを上げて行くタイプの人と、最初にギアを上げて次第に失速して行くタイプと。
ぼくは後者だったのかもしれません。でも結果的には"ダメ出し”の意味を理解して、徐々に環境にも慣れ、ギアは自分の想像以上に上げられたと思っています。経験とともに自分の可能性を自分で決めてしまうところがありますが、実際はそうではないってことを教えてもらいました。有り難い事ですよね。


3.ラップ・パフォーマー、djembeプレイヤー、パーカッショニストとして、大切にされていることはどんなことですか?

下町兄弟 これらを同時に演じることができるのは、小池さんの舞台だからこそ有り得たと思っています。ただラップにしてもdjmebeにしても他の打楽器にしても"言葉”であり"呼吸"であることには変わりないので、 そこが噛み合ないと舞台全体の違和感になってしいますよね、音選びもそうですが、発音の方法には答えが1つではないと公演の最終日まで考えていたりします。 あとは小池さんがイメージしている音以上の何かを出せればと常に意識していますね。

4.舞台でのパフォーマンスはどんなところが魅力ですか?

下町兄弟 先ほども言いましたが、皆の呼吸が1つになった瞬間の連続ですね。そこに音がどう交わって行けるか、全員が感じた瞬間ってもの凄いエネルギーで空気が動きますからね。

5.「2030世界漂流」は、様々なバックグラウンドを持つ出演者の方・音楽家の方との共演となっています。稽古が始まってのご感想をお聞かせください。

下町兄弟 まだ全員が揃った時間が少ないのですが、出演者の数だけ、皆さんの個性が日を重ねる毎にどんどん出て来て、動き、表現を側で観ているだけでも楽しいです。また太田さん、祭さん、それぞれ引出しがたくさんある方々なので、一緒に音を出す時間は楽しいことばかりです。太田さんの曲のフレーズは「世界会議」でもそうでしたが、頭の中でずっと鳴り続ける中毒性があるので注意してください(笑)。

6.「2030世界漂流」の音作りで苦労されていること、取り組まれていることがあればお聞かせください。

下町兄弟 主に太田さんの方がぼくよりも苦労されているとは思いますが、生演奏の場面でベースがいないけど、バンド風の音を作らないとならないので、そこは演奏家3人で色々と考えて話し合ってきました。ぼくの方では全体の音のバランスがまとまるような打楽器をどう場面毎に選んだら良いか気を使っています。
稽古の途中段階では、本番での出音を想像しながらでないと実演できないので、何度も改良が必要になることもありますが、組み立てて行く過程も楽しんでいます。
音で広げられる可能性は無限にあるはずなので、それをどうセレクトして行かなければならないか、とても重要性を感じています。作品毎に使用する楽器もチューニングも違ってきます。今回は特に自分でも初めて使う楽器もあるので楽しみです。

7.「2030世界漂流」の見どころ、作品への意気込みをお聞かせください。

下町兄弟 兎に角、面白いと思います....いや、普段使っていない脳細胞が動き出すと思います。ぼくが初めて小池さんの作品を観た「三人姉妹」は、そのとき、何なのだろう?この感覚は......この後味は.....と。脳細胞が動く音が聞こえました。そして但々また観たくなりました。”面白い”とか”良かった" とかそんな一言では語れないんでしょうね。出逢ったことのない領域を体感した時、言葉にするのは難しいです。少し大袈裟かもしれませんが、人の根源的な自由と希望があるのかもしれませんね。
是非心も身体もニュートラルにして観に来て欲しいです。


1-2枚目© Fumihiko Suzuki、3枚目:稽古風景より



飯名尚人さんインタビュー

1.小池作品には「風の又三郎」「世界会議」に続く3回目のご参加となる飯名さん。小池博史は飯名さんについて「意図したことに対して的確な出 し方をしてくれるっていう意味で、 とっても面白いなと思ってんだよね。 意図したこととまるっきり逆のことをやるっていうタイプと、 なんか言われたまんまやる人っているんだけど、 どっちでもなくて、なんか適格というか、 いいバランスで入ってくるなっていう感じがしてます。」と語っています。映像作家として参加される上で、大切にされていることはどんなことですか。

飯名 毎回、小池さんの脚本通りに映像を作っているというわけでもないんです。かといって、僕の好きな映像を作って流すというようなこととも違うんですね。もちろん、この作品は小池さんの作品で、小池さん個人のいろいろな歴史とか体験・主義・主張というのがあるわけですが、小池作品であると同時に、僕自身の作品にも成ってしまうような関わりを映像の中で繰り広げたいと、いつも思って参加しています。


2.前作「世界会議」において、 もっとも苦労されたエピソードについて教えてください。

飯名 映像を映すスクリーン探しが大変だったんです。予算と時間との戦い!それから素材感。小池さんからは黒い空間にしたい、という要望があって、白いスクリーンだと変に目立っちゃう。それで、農業用ビニールハウスの半透明ビニールを使うことに。やっと専門業者を見つけて、スクリーンサイズにビニールを繋いでもらったんです。


世界会議より



3.映像作家・演出家として、舞台とメディアのための組織Dan ce and Media Japanを設立され、テクノロジーとダンスを中心に海外からアーティスト招聘事業を多数行い、プロデューサー、映像作家、 ドラマトゥルクとして幅広くご活躍の飯名さん。飯名さんからみた 「小池作品」の特徴・魅力についてお聞かせください。

飯名 小池さんって、<ピュアで不器用な少年>、褒め言葉ですよ(笑)。小難しいことは言わない人で、明るいし、コミカルで、パワーがあります。その一方で、ものすごくメランコリックな世界を抱えてる。作品でもそういう世界が描かれていきます。小池作品は「イメージ」の連結なので、散文的なものではないし、詩ともちょっと違う。ドローイングというか、感覚的で肉体的。稽古中、一番声が出てるのが小池さんですね(笑)。パフォーマーとして素晴らしいのではないかと僕は思ってるんです。ぜひ次回は出演してほしいですねー。

4.今回開場20分前より、飯名さんの映像×音楽家× パフォーマーによるインスタレーション空間が広がります。 舞台空間でのパフォーマンスは、どんなところが魅力ですか?

飯名 神韻縹渺とでも言いますか・・・パフォーマーの精神とか肉体とか、歴史とか時代、それから音、光と影が、時空を静かに漂うような・・・。これでは何を言ってるか意味不明ですね・・・是非、早めにご来場くださいませ。

5.「2030世界漂流」の見どころ、 作品への意気込みをお聞かせください。

飯名 いくつもの映画のワンシーンを、たくさん見ているような、そういう舞台作品になるんじゃないかって思います。


2030世界漂流、制作中の映像のワンカット





下町兄弟
【下町兄弟(Shitamachi-Kyoudai) プロフィール】
サウンド・プロデューサー/ソングライターとして多数アーティストへのトラック・メイキングや楽曲提供を行う(BANANA ICE)。ラップ・パフォーマー/djembeプレイヤーとして下町兄弟を名義に活動。SHIBAURARECORDS(since 1992)を主催しオリジナル作品を発表。パパタラフマラ舞台『百年の孤独~Heart Of Gold』の出演をきっかけに、小池博史作品には『シンデレラ』『注文の多い料理店』『風の又三郎』『マハーバーラタ』『世界会議』に参加している。



飯名尚人
【飯名尚人(Naoto Iina)プロフィール】
映像作家・演出家/舞台とメディアのための組織Dance and Media Japanを設立。テクノロジーとダンスを中心に、海外からアーティスト招聘事業を多数行う。プロデューサーとしてアイルランド発のアートパーティー「マムシュカ」、「国際ダンス映画祭」、ドイツの劇団「ポストシアター」などを手掛ける。 映像作家として、佐藤信作品『The Sprits Play/霊戯』『リア』、川口隆夫作品『パーフェクトライフ6』他。ドラマトゥルクとして、川口隆夫作品『大野一雄について』『Touch of the other』他。ダンスフィルムの監督作品に『Love Vibration』(鈴木ユキオ、辺見康孝)、『あなたとわたし、ワルツ』(南郷アートプロジェクト)他。東京造形大学特任教授、京都精華大学非常勤講師、座・高円寺劇場創造アカデミー講師。



【2030世界漂流公演情報】
◆公演日程:2018年2月3日(土)~2月12日(月・祝) 全12公演
◆会場:吉祥寺シアター
◆チケット(全席指定席):
一般発売開始:2017年12月2日(土)10:00~公式HPのチケットフォームにて開始