アーティストインタビュー

2030世界漂流・稽古場レポート、アーティスト紹介&インタビュー! 衣装・浜井弘治さん&横笛・サックス・ギターの太田豊さんです!

浜井弘治さんインタビュー

1.1992年から2003年までパパ・タラフマラの衣装をてがけ、特に代表作となった「パレード」「SHIP IN A VIEW」「城-マクベス」ではファッション業界からも大きな注目を浴び、小池博史ブリッジプロジェクトにおいても「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」「世界会議」と数多く手がけている浜井さん。小池作品に参加される上で大切にされていることをお聞かせください。

浜井 作る過程の重要性です。
どういう事か?というと、例えば、『青』というパパ・タラフマラ時代の作品は藍染という染色技法を使っておりますが、青梅市の「壺草苑」さんという藍染工房で天然藍を使って染色しました。「舞台に天然藍なんて使う必要が無いじゃあないか!」と思うかもしれないですが、小池さんから「今回の『青』という作品は、色の青であり生命の根源です。」というコンセプトを聞いて、「これは藍染の概念そのものだ!」と思いました。天然藍は、3%の色素と97%の不純物からなるものです。ところが、合成藍は、真逆で3%の不純物と97%のか色素からなります。前者は生命体ですが、後者は人工物です。この不純物って何だろうと考えながら作りました。「単に青い色を着けて照明を当てれば同じじゃあないか!」と思うかもしれませんが、小池さんの舞台作品には、そこにこだわる事が重要だと思います。


パパタラフマラ「青」より

2.ファッションデザイナーとして、小池作品以外にも、大駱駝艦、野田秀樹、白石晃、オンケンセンの「リア王」など数多くの舞台衣装をてがけてこられた浜井さん。小池博史は浜井さんについて「いろんな意味で発想が面白い。「世界会議」もそうだけど、タラフマラの中期の衣装はほとんど彼なんだよね。一番一緒にやってきている。「SHIP IN A VIEW」「パレード」なんかももそうだしね。僕は彼が入ってくれるとウキウキする。それは彼にしか出ないアイデアに満ちるからなんだよね。」と語っています。舞台衣装を作成される上で、どんなことを大切にされていますか。

浜井 演出家の方々と出会い話をすると、その方々が持っている世界観にいつも驚かされます。
そして 、演出家の方々へのプレゼンテーションとして、いつも心がけているのは、期待を裏切る事です。どういう事かというと…これら演出家の方々の世界観を忠実に衣装に落とし込む事より(一種の裏切りというのか)これまでに、その演出家がしなかった新たな表現の提案を心がけております。そうする事でお互いが新たな世界観の発見を共有できると思うんです。そして、毎回そうですが、お互いの考え方の議論の日々となってしまいます。
例えば、野田秀樹さんの時は、王様になりたかった石の話という『ローリングストーン』という作品ですが、石を表現するのにデニムをブリーチして使いました。それは、デニムのもつ変化する面白さを衣装にしました。当初、「デニムなんて舞台衣装になるの?」という事から始まりましたが、デニムは時代から生まれたものでありながら、時代を超えた普遍性があるので、この舞台のコンセプトにピッタリだと思い提案しました。
小池さんの舞台も、まず、小池さん側から「こんなコンセプトがあるんだ!」という驚きからスタートしますが、それならば、コンセプトをどう膨らませるか?そしてどう裏切るか?考えます。(笑)

3.浜井さんからみた、小池作品の魅力についてお聞かせください。

浜井 頭の中を空っぽにして自由な解釈で見る…それには、知性に裏打ちされた感性が重要ですが、それが小池作品の魅力だと思います。
前期は、「城~マクベス」の様にシェークスピア作品を現代演劇に蘇らせた様に人間の普遍性を説いた作品が多いです。つまり、人類は、一見、テクノロジーの進化で経済的な発展遂げた様ですが、人間の本質はどの時代にも変わらない、哀しさ可笑しさ、それらはユーモアとも悲劇とも取れる…でもそれこそが人間なんでしょうね。これらを自分なりの解釈で自由に見る事が魅力です。
そして、後期ともいえる、小池博史ブリッジプロジェクト以降は、一種の社会問題…それは、現代が抱える闇の部分や身近に潜む不安を小池さんなりの解釈で提案している事だと思います。
それは、民族間の紛争であったり、社会が抱える閉塞的な悩み等…それらを警告する事で新たな生き方を提示している様な魅力です。

4.次回作「2030世界漂流」の魅力をお聞かせください。

浜井 『2030世界漂流』というタイトルから既に魅力的ですね。
現代は、瞬時にして様々な情報が入り、様々なテクノロジーが壮大な未来を作る可能性に満ちておりますが、世界は未来に対して多くの不安を抱えております。それらを漂流と表現したのでしょうね。

5.「2030世界漂流」の衣装プランを少しだけ教えていただけますか?

浜井 今回の衣装は、一から作らず、リメイクする方法を考えております。それは予算の関係もあります(笑)。しかし、モノに溢れた時代に一から作らない…その方が現代的で時代に合った表現なのかもしれません。1枚のシャツが、コートにもボトムにもドレスにも変化するようになればと思い模索中です。


1枚目/ パパタラフマラ「SHIP IN A VIEW」より



太田豊さんインタビュー

1.小池博史ブリッジプロジェクト作品には「世界会議」に続く2回目のご参加となる太田さん。小池博史は太田さんを「メロディーメーカー」と評し、「古典の要素っていうのは場の感覚を広げる。とても重要」語っています。小池作品の魅力や遣り甲斐はどんなところですか?

太田 私が関わる舞台は「陰陽師」や森山開次さんの「神の子勧進帳」などのようにいわゆる和物の題材が多いのですが、小池さんの作品は題材とはあまり関係なく、能楽師の清水寛二さんや尺八奏者の中村明一さんがキャスティングされていて、そこがとてもおもしろいと思います。私も古典芸能である雅楽の演奏家ですが、「2030世界漂流」では笛はほとんど吹きません。今のところギターやサックスが中心です。でも「私の音楽はやはり雅楽で形成されている」、小池さんの舞台でその思いが一段と強くなり、確信に変わったことにとても感謝しています。


2.雅楽演奏家として笛・琵琶・左舞を専門としながら、サックス、ギター、サンプラーなど様々な楽器を用いて舞台芸術のための音楽を制作し、多種多様なアーティストと共演されるなど、和洋のハザマで多岐に渡って活動されている太田さん。何故和洋両方の活動をされているのか、和洋のハザマで活動することの魅力をお聞かせください。

太田 私はサックス奏者としてキャリアをスタートし、海外公演をきっかけに以前より親しんでいた雅楽の演奏家になりました。今はちょうど50%50%の割合で音楽活動をしています。当初は「今日は雅楽」「今日はジャズ」とスイッチを切り替えて、片方をシャットダウンしていましたが、最近はスイッチが甘くなって感覚が混じるようになってきました。これこそが私が目論んでいることです。
私を含め多くの日本人は洋服を着てイスの生活をしています。こうした西洋化は世界中で進んでいると思いますが、自国の感性や文化は思いのほか根強いものです。例えば音楽的なことでいえば、宴会の終わりにやる「三本締め」は「よ~」のかけ声だけで複雑なリズムパターンを全員が一斉にハンドクラップするわけです。アメイジング!ですよね。しかも酔っ払いのおっさんらがですから。日本人のリズム感は欧米やアフリカとは違うというだけで、とても鋭いものがあると思います。私の場合は雅楽を聴き続けるとピアノが音痴に聞こえますし、五線譜を演奏してもリズムが不均等に揺れたりします。そういった自然に出る感性や感覚でオリジナリティを作ろうとしています。単に和楽器で西洋音楽 をやるってことではなく。

3.「2030世界漂流」は、様々なバックグラウンドを持つ出演者の方・音楽家の方との共演となっています。稽古が始まってのご感想をお聞かせください。

太田 そういう点でもフィリップさん、ムーンムーンさんは、クラウンやインド舞踊をルーツに持ちながら活動されているところが非常に興味深いです。そして同じ舞台に立てることはとても光栄です。またキャストの方々の人数とバリエーションが多いことがとてもおもしろいです。あの人数で動くとすごい。身体は強いなぁ、うつくしいなぁと稽古のたびに思います。

4.「2030世界漂流」に音楽家として参加することの魅力、やりがいについてお聞かせください。

太田 舞台音楽を生で演奏する大きなメリットはテンポだと思います。ただそれはとても繊細で非常に難しいです。舞台にある全てをキャッチして音を出す、理想ですがトライすることはとても楽しいです。







浜井弘治
【浜井弘治(Koji Hamai) プロフィール】
山口県下関市生まれ。ファッションデザイナー。94年、事件性にこだわった「工場見学」などのインスタレーション作品を銀座ソニービルにて発表。以降も数々の舞台衣装等のを手掛ける。1992年から2003年までパパ・タラフマラの衣装をてがけ、特に代表作となった「パレード」「SHIP IN A VIEW」「城−マクベス」ではファッション業界からも大きな注目を浴び、大駱駝艦、野田秀樹、白石晃、オンケンセンの「リア王」などの衣装をてがけた。2006年よりデニム、ワークウエアーをアイテムに重点を置くために活動の拠点を東京よりデニム産地の山口県に移動し「うるとらはまいデザイン事務所」設立。2007年「匠山泊」ブランドにてサードコレクション・デニムを発表している。



太田豊
【太田豊(Yutaka Ota)プロフィール】
音楽家・雅楽演奏家 雅楽演奏家として笛・琵琶・左舞を専門とし、国内外での雅楽公演に出演。笛・左舞を元宮内庁式部職楽部首席楽長安齋省吾氏に師事。 また音楽家として笛、サックス、ギター、サンプラーなど様々な楽器を用いて舞台芸術のための音楽を制作し、多種多様なアーティストと共演。 その他、北陸新幹線新高岡駅発車メロディーをおりん(仏具)を用いて制作するなど、和洋のハザマで多岐に渡って活動中。東京藝術大学邦楽科卒業。

太田豊HPhttp://otayutaka.com/



【2030世界漂流公演情報】
◆公演日程:2018年2月3日(土)~2月12日(月・祝) 全12公演
◆会場:吉祥寺シアター
◆チケット(全席指定席):
一般発売開始:2017年12月2日(土)10:00~公式HPのチケットフォームにて開始