【 会場 】
Centrum Sztuk Performatywnych, Piekarnia (ヴロツワフ、ポーランド)

【 公演日時 】
2023年2月17日(金)、18日(土)

photo by Tobiasz Papuczys

ポーランドのグロトフスキ研究所との国際共同制作。
ポーランドの小説『コスモス』(1965年 ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ)をベースに、混沌とした世界のなかで迷い、翻弄される人々が、尽きせぬ欲望と捻じれた愛を抱えた自分自身という存在とどう向き合っていくのか。さらに、そこに忍び込んでくる宗教の影を描き出しながら、1960年代の小説と現在を繫ぎ、未来への展望を示した作品。
「KOSMOS」がポーランドメディアが発表する「現代演劇年間ベスト1」を受賞。

photo by Tobiasz Papuczys

▼あらすじ

主人公の青年が、友人と共に行き当たりばったりで借りたアパートの部屋の周辺で、不可解と思い込めば思えなくもない出来事が次々と起こる。青年はそれらをなんらかの事件の予兆だと考え、観察をはじめる。様々な現象やオブジェ、偶然に置かれているもの全てが矢印に見え、それに対して偏執的ともいえるほどの探究心を見せる。偏執的思考はさらなる狭隘を生み、薄気味悪さが広がり、暴力へと発展し、どこにも正義がない状態が残されていく。しかし、彼の頭の中はそれ以上に、住民の若き夫婦の情事や、夫人の小間使いの唇に支配され、次第に混迷していく……。

photo by Tobiasz Papuczys

▼公演へのコメント

小池博史の『KOSMOS』に大満足し、深い関心を持ちました。俳優たちの演技、ナレーション、進行の速さ、音楽、そしてパフォーマンスの身体性、それら全体が、そもそもの物語を知っていた私に、物語の終わりを気づかせてくれたのです。生木の舞台美術も良かったし、和太鼓を使った演出や能楽の謡にも感動した。私はこの舞台を心からお勧めする。
– カタジナ・ノヴァク (クラクフ Mangha博物館館長)

人間の歪みが壮観なまでに表出され、無駄が削ぎ落とされ、鋭利さが際立つ舞台!
– ベアタ・ゴルシュカ(批評家)

ポーランド人として見たこの作品は、とても日本的でありながらポーランド的でもありました。ザコパネで展開する物語であり、ザコパネの空気が確かに感じられたことに感心しました。特にゴンブロヴィッチに見られるような驚くべきユーモアのセンスが繊細に、見事に引きだされていました。最も重要なのは、言葉のやり取りだけで全体が支配されているのではなく、幻想的な映像と舞台美術が融合し、すべてが共通の有機体となっていることです。この作品で深く印象に残ったのが、常に感じられる脈動とリズム、そして音楽全般でした。音楽はヴァツワフ・ジンペル氏が担当しています。彼はクラリネット奏者として、ジャズやエレクトロニックミュージシャンとして有名で、世界的なミュージシャンです。ここで彼は多くの楽器を演奏し、この音楽がポーランドの山岳地帯の音楽と日本のイメージを混ぜ合わせ、舞台の一部として生演奏されていました。
– ダグマラ・ホイナツカ(アナウンサー)

何度も何度も、脚色はカオスの側に立った。小池博史はテキストを大胆に省略し、台詞をカットし、イメージをミックスして独自のコラージュを作り上げた。あらすじのわかりやすさなど気にしていない。パフォーマンスには、動き、身振り、狂気のパントマイムが満ち溢れて、ほとんど言葉は発せられず、それぞれのパフォーマーが母語を使った。登場人物たちが舞台上に存在する様は、リアリズム心理学の定石とは対極にありながらも、「私たちの生活のあらゆる脈動は、何十億もの小さな粒子で構成されている」というゴンブロヴィッチの信念を具現化していた。
– ヘンリク・マズルキエヴィチ(作家)

▼出演者

脚本・演出・構成・振付:小池博史

出演:
松島誠
今井尋也
福島梓
ダビット・バロヤン(ポーランド)
アリチア・チルニヴィッチ
カシュカ・ドゥデク
マレク・グルジンスキ
シルヴィア・H.レヴァンドスカ

音楽:ヴァツワフ・ジンペル(ポーランド)

美術:小池博史
映像:アドリアン・ヤカウスキ
衣装:エディタ・クリシェヴィッチ
照明:ヤロスワフ・フレット、ダニエル・クズマ
人形・小道具:マウゴシャタ・ブラシュカ

photo by Tobiasz Papuczys
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