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演出助手まつりか!ついに演出家小池博史に迫る!!!
こんにちは!新人演出助手まつりかです!連載もいよいよ今回でラストです!
前回、小谷野さんにクル家とパーンドゥ家が対立して、大戦争に突入突入してしまうまでの13年間について、お話伺いました。
私が演出助手を務めている舞台「幻祭前夜ーマハーバーラタより」も、もうすぐ東京/吉祥寺シアター公演です!ドキドキ!
でも、どうして今のタイミングで"マハーバーラタ"をテーマに舞台をつくろう!ということになったんだろう?なんでいま、日本でやるんだろう?という疑問がわいたので、演出家の小池さんとパフォーマーの白井さん、あらたさんにお話を聞いてみたいと思います!
さてさて、小池さん・・・?どこにいるのかな?
いたー!小池さーん!
まつりか「小池さーん!まつりかは、マハーバーラタに詳しくなって出直してきました!」
小池さん(以下、小池)「まつりかーーーー!!!!!」
まつりか「ぎゃーっっっ」
ワンツー!
パーンチ!
まつりか「殴られたー!!!お父さんにも殴られたこと無いのに!!!」
小池「このドングリめーー!」
まつりか「きゃー!」
白井さち子さん
あらた真生さん
はい、毎回恒例の着席をしました!毎度お騒がせしております!
おちついてお話お伺いしたいと思います!
まつりか「本日はお集り頂きありがとうございます。この前、小谷野さん、界さん、松縄さんに「マハーバーラタ」のことを聞きまして、だいたいわかってきました!」
白井「おぉ〜 すごいじゃないか〜!」
まつりか「今回、上演する『幻祭前夜ーマハーバーラタより』は、クル家とパーンドゥ家っていういとこ同士が対立して、クル家の人たちがイカサマ賭博を仕掛けてパーンドゥ家の人たちを森に追放しちゃうっていう話なんですよね!」
あらた「そうそう、それで森で12年を過ごして、1年の潜伏期間を経ていよいよ戦争に向かう!っていうところまでだよ〜」
小池「エグザイルです。EXILE。」
まつりか「へ?エグザイル?(あのイカツイお兄さん集団?)」
小池「エグザイルから戦いが始まる直前まで。Exile to the before the war.Exile to Forest.」
あらた「エグザイルは英語で亡命とか、そういう意味ね。」
まつりか「あ!なるほど!英語でですね!びっくりしました!」
イカツイお兄さん集団
小池「で、今日は何が一番聞きたいの?」
まつりか「小池博史ブリッジプロジェクトが、どうして今マハーバーラタを作ろうと思ったかっていうことと、なんで今年は日本でも公演することにしたのかっていうこととかを聞きたいです!」
白井「おぉ、いきなり本題。」
小池「んー、それはパリの惨事を見てもわかると思うけど、今、本当に世界中がヤバいんですよ。原理主義的な状態、ナショナリズム、こういうものがどこ行っても勃興してきちゃって、今のままいくと近い将来、本当に悲惨な状態になるっていう思いがある。」
まつりか「そうですね・・・。ニュースを見ていてもとても複雑な気持ちになることが多くて辛いです。」
小池「『じゃあ、どうすればいいのか』ということになると難しいんだけど、今は民主主義っていうものが何なのか、っていうことも含めて問い返さないといけない時代にきていると思うんだよね。」
まつりか「みんしゅしゅぎ・・・」
小池「つまり、西洋型の思想そのものが、もう限界値に達している。『じゃあ、その次は何か?』って言ってもそれが見つからないから、本当に混沌としてきてしまっているという状態だと思うんだよ、今。」
まつりか「うぅぅぅん。」
小池「で、マハーバーラタをやろうと思った。」
昨年はインドで創作された
まつりか「その、答えが『マハーバーラタ』にあると思ったっていうことですか?」
小池「答えそのものがあるというより、”世界を見ている目”だよね。」
まつりか「せかいをみているめ?」
小池「マハーバーラタって結局は、一族全員が止められない戦争に巻き込まれていってしまうという悲劇なんだよ。」
まつりか「はい・・・」
小池「それでいて、結局は今もマハーバーラタの時代も、人間というのは基本的には同じじゃないですか。」
まつりか「そうですね・・・」
小池「作中には核戦争的な記述もあって、いろんな神とかがどんどん出てきて宇宙戦争みたいなことになるんだけども、もしこれと同じようなことが現代で起たら・・・人類が完全に息絶えてしまうという可能性もありうると思う。」
まつりか「うわぁぁぁ。」
小池「だからこそ、いまこの物語を見つめ直さなきゃいけないのだろうと思ってるんだよね。」
まつりか「なるほど・・・」
空から宇宙から色々出てくる
小池「でも『自分たちはなにが出来るか?』ということって本当に難しくて、いろんな意味で。僕たち自身がその先を見つけないといけないと思っている訳ですよ。本当に難しい問題なんだけどね。」
あらた「技術とかでも、どっちに転がって行くかわからないようなことが起きちゃうから、正義とか、悪だとかを端的に判断するのは危険だよね。」
まつりか「そうですね。あらゆることが平和的に使われるとは限らないですもんね。」
白井「これは私の考えだけど、『マハーバーラタ』の世界観だと神様の世界とか、人間世界とか、動物世界とかがあって、お互い尊重しながら生きていく、共生していくことが均衡を保つことという前提があると思うんだけど、現代は科学とか技術とかで『人間は何でも出来る、無敵だ!』って思い込んでしまっている人が多いんじゃないかなと思う。身体の感覚とかも失われつつあって、そういう『本当は持ってないといけない感覚』っていうのを失ってきているんじゃないかな。そう意味で今、本当に自然と調和することが大切だと思うんだよね。」
まつりか「それ、小谷野さんに一番最初におしえてもらった世界観です!」
あらた「アジアはどの国に行ってもそういう感じだよ〜」
まつりか「そうなんですね!」
小池「問題なのは何かって言うと、人工的な問題。いわゆるナチュラルディザスター(自然災害)ではなくてアーティフィシャル(人工的な)ディザスター(災害)の方がよっぽど危険なんだよね。そういうことがかなり身近な時代になってきてしまっているってことを、本来ならもっとひとりひとりが認識しなければいけないんだけれども、もう『俺たち関係無いから、おまかせ』で、あとは「自分が死ぬまでは、なんとか適当にやってくれるからまぁいいや」みたいな感じで生きている人もすごく多いと思うんだよ。」
あらた「自分がみわたせる、とっても近いところしかみていないってことですよね。」
小池「でも、子供欲しいって思うこともあるでしょ?いま産んだとしても、ひ孫の世代にはもうすっかり100年後なんだから。」
まつりか「そそそ、そうですね。言われてみれば・・・。」
小池「もちろんそこで終わりってことでもなくて、もっともっと先のこともイメージしようとすることが肝心だと思うわけよ。」
あらた「何千年も受け継がれてきた物語にはそういうイメージを引き出すような普遍的な物語がいっぱいつまってるよね。」
ところで、これまでの公演の反応はどうだったの?
まつりか「実際に、今回の『幻祭前夜』の前身となる『マハーバーラタ第2章』を昨年度、本場インドでも公演されてきたと思うのですが、その時の反応はどんな感じでしたか?」
白井「もうすごかったよ!」
まつりか「そうなんですね!」
『マハーバーラタ第2章』を本場インドで公演した時の反応とは?!→
話を聞いた人
多賀谷まつりか
演出助手 Asistant Director
舞台芸術の学校(P.A.I.)「からだをとりもどすスキルアッププログラム」受講生。踊るのは好きですがカタカナは苦手です。3月には学校の卒業公演もあるのでぜひ見に来てください〜!
1991年広島県生まれ。B型。ダンスをやったりお芝居をやったりしながらすくすく育つ。身長141cm。大学卒業後P.A.I.に入学。
今回答えてくれた人
小池博史さん
演出家
茨城県日立市生まれ。一橋大学卒業。TVディレクターを経て1982年パフォーミングアーツグループ『パパ・タラフマラ』を設立。以降、全55作品の作・演出・振付を手掛ける。パパ・タラフマラ以外での演出作品も多数。演劇・舞踊・美術等のジャンルを超えた、強くオリジナリティ溢れる作品群は、35ヶ国で上演され、国際的に高い評価を確立。各国アーティストとの作品製作やプロデュース作品の製作、世界各地からの演出依頼公演、プロ対象・市民対象のワークショップを数多く実施。97〜04年つくば舞台芸術監督、アジア舞台芸術家フォーラム委員長、国際交流基金特定寄附金審議委員(05年~11年)等さまざまな審議員、審査員等を歴任。2012年5月、パパ・タラフマラ解散。青幻舎より「ロンググッドバイ~パパ・タラフマラとその時代」刊行。同年6月、新プロジェクト「小池博史ブリッジプロジェクト」を発足。2013年、自身初の単独著書「からだのこえをきく」を新潮社より刊行。
今回答えてくれた人
白井さち子さん
パフォーマー
7歳よりクラシックバレエを始める。82年より6年間橘バレエ学校に在籍。牧阿佐美に師事。日本女子体育短期大学舞踊コース卒。在籍中、太田順造にパントマイムを師事。89年よりパパ・タラフマラに参加。以降パパ・タラフマラのほぼ全作品に出演。後進のパフォーマーのダンス指導にもあたる。パパ・タラフマラ作品のメインパフォーマーのひとりとして活躍。バレエ講師としても精力的に活動。小池博史ブリッジプロジェクトの「銀河鉄道」、2013年の「マハーバーラタ」第1章、2014年の「マハーバーラタ」第2章にも出演。
今回答えてくれた人
あらた真生さん
パフォーマー、武道家
4歳よりモダンバレエを始める。大学卒業後ダンスシアターカンパニー「パパ・タラフマラ」でメインダンサーとして数多くの作品に貢献する。現在はソロ活動や異分野のアーティストとのコラボレーションを定期的に展開している。東京を拠点に、欧米、アジアでの後進の育成として大学・高校・中学校の講師も勤めている。